【特集】大学ミスコン 問われるあり方 

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■ 外見差別・性差別・営利など問題が山積 廃止や大学が禁止の例も

 近年、日本各地の大学で開かれる「ミスコンテスト」のあり方が変化している。コンテストの廃止や、性別を不問にするなど対応が広がっている。大学がやめるよう求めた例もある。ミスコンが性差別やルッキズム(外見差別)を助長しているという声の高まりが背景にある。(難波千聖、壷山千種、松岡樹)

 大学のミスコンは才色兼備の学生を選ぶ行事として、各地の大学で開かれ、アナウンサーの登竜門になってきた。関西学院大学でも2014年に社会学部を卒業した永島優美さんが11年に「ミスキャンパス関西学院」に選ばれ、フジテレビにアナウンサーとして入社している。

 大学でミスコンを開催することには批判や懸念の声もある。多様な学生が対等に学べる場である大学の名前を冠して、画一的な評価で出場者に順位をつけることには批判がある。大学の名前を冠したコンテストが、協賛企業の広告活動に協力している点を指摘し「営利を目的とした活動は認められない」(関西学院大学職員)という声もある。

 東京大学にはミスコンの開催に反対する学生団体がある。ミスコン&ミスターコンを考える会は大学内でのチラシ配布やSNSでミスコンの中止を求めて情報発信している。

 昨年11月、法政大学は学内施設を利用してコンテストを開くことを認めないと発表。「主観に基づいて人を順位付けする行為は、『多様な人格への敬意』に相反するもの」であり、容認できないとした。

 上智大学は今年、男女別のコンテストを廃止した。性別や国籍、外見を問わず、大学を代表するインフルエンサーを選ぶ「ソフィアンズコンテスト」に模様を変えて実施する。従来の自己PRやスピーチに加えて自身の問題意識に沿った社会発信も審査対象にした。今年のファイナリストは国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標)に基づいた情報発信をする。

 青山学院大学は今年、ミスコン・ミスターコンに性別を問わず出場することができると明文化した。

 「ミスキャンパス関西学院2020」は6人のファイナリストが出場、来月28日に弥生の風ホール(大阪府和泉市)でグランプリが選ばれる予定。冠スポンサーには医療脱毛専門の美容クリニック「リゼクリニック」がついている。

■ 「特定の価値観で人を判断していい」という空気を大学内で助長   大学の名前を使うべきか判断が必要

 ミスコン&ミスターコンを考える会会員の話 大学でのミス・ミスターコンは中止すべきです。ミス・ミスターコンは、社会に存在する性差別やジェンダー規範を肯定し、再生産しています。女性の容姿や振る舞いに男性的な評価をすることに疑問を感じます。

 女性は、日常的にいかに美しいか、男性を立てた振る舞いができるかといった男性的な評価に晒されています。コンテストはこうした評価を露骨に表現し、特定の価値観で人を判断してもいいという空気を大学内で助長しています。

 社会の規範や価値観を問い直す場所であるはずの大学で、このようなコンテストが認められていることは、大学がどういう場所なのかということも問題になってきます。

 学生の自治が望まれる大学でどこまで大学が関与すべきかの判断は難しいです。「ミスキャンパス関西学院」のように、大学の名前を使い、大学のコミュニティの中でコンテストが行われている以上、大学当局にも責任があると思います。

 今年、上智大学がミス、ミスターを決めるコンテストを廃止し「ソフィアンズコンテスト」を新設しました。価値観の押し付けやルッキズムを助長しているとの批判を受け入れた姿勢は評価しています。しかし、社会貢献が評価の対象になり、新たな規範、価値観を生み出しています。ルッキズムから完璧には脱却できず、評価基準に容姿が少しでも入っていることも問題です。

 規範や価値観の押し付けは日常的に存在します。それを大々的に行うミスコンを問い直すことで、社会の規範や価値観に抗う希望になると考えています。

■関学主催者、批判・疑念に「一切対応できていない」「外見だけで審査しているわけではない」

 「ミスキャンパス関西学院2020」を主催する実行委員で社会学部3年の中尾仁美代表は、ミスコンテストについて批判や疑念に「一切対応できていない」としつつ「外見だけで審査しているわけではない」と強調した。

 コンテストには60人の応募者の中から書類審査と対面審査で選ばれたファイナリスト6人が出場。来月28日のファイナルイベントで、グランプリが決まる。中尾代表は「イベントの審査基準は非公開だが、外見だけで判断しているわけではない」と述べた。

 実行委員は、関西学院大の学生20人が所属。大学非公認だが、大学の名前を使って活動し、協賛企業の広告活動に協力している。中尾代表は「営利目的でないとは言い切れない。大学から活動停止を求められたら従うしかない」と話した。

 近年、性差別や外見差別などの理由から、コンテストを廃止する大学が増えている。関西学院大のミスコン開催にも、批判や疑念の声が挙がっているが、実行委員は一切対応できていないとした。

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