(ポプラ)今日から始まる「A面の春」

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 俳人の黛まどかさんの初の句集『B面の夏』は、レコードがはやった時代の恋心や青春を詠んでいる印象的な作品である。人間の心は今も昔も変わらないなと感じていると、思わず目に留まる一句があった▼〈春の風邪移されて身に覚えなき〉。春は気候が刻々と移り変わる季節である。同様に、次々と人との新しい出会いや別れがある季節だと、風邪を知らぬ間にうつされて改めて気付く▼関学大は昨年度、オンライン授業が主な授業形態だった。学生のほとんどは外出を控え、人と会う機会が減っている。キャンパスに一度も行かず、人や自然との関わりが一切ない生活を過ごす学生も中にはいた▼筆者自身振り返ってみると、出会いもなければ季節も感じない1年間だった。コロナ禍前と今とで、こうも環境が変化するのか。こうした時代では仕方ないと思いつつ、後ろ髪を引かれながら、ふと家の窓から景色を見た▼季節の変化は、身近なところにもあった。冬ごもりをしていたチョウが姿を現し、ツバメがぽつぽつと空を飛んでいた。西宮上ケ原キャンパスでも梅が開花し、中央芝生に緑が生えてきたと聞き、季節の流れの速さに驚いた▼今年度から各キャンパスは対面授業を中心に実施する。例年通りとまではゆかないが、キャンパスににぎわいが戻ってくる。新しい出会いが生まれるかもしれない▼出会いがあれば別れもある。黛さんはあとがきで「出会いにいつか終わりがあろうとも今この瞬間を精いっぱい生きた」と当時の恋心を振り返りながら語る▼季節や人は一期一会だ。後戻りはできない。いつかは別れがやってくる。出会える時間が有限であるからこそ、学校に行くときには、周りを見渡し、人と交流して季節をじっくりと感じたい。

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