(ポプラ)樹木希林さんを悼んで

 「ありがとうございました」——映画「万引き家族」の劇中で、樹木希林さんがアドリブで口にした言葉である。この言葉にこめられた彼女の思いとは——

 今年9月15日、日本を代表する名女優であった樹木希林さんが、息を引き取られた。享年75歳であった。

彼女は、2003年1月に網膜剥離で左目を失明。また、2013年3月に全身がんに侵されていることを告白。しかしながら、彼女は重い病をものともせず、亡くなる直前まで女優業を全うした。

 また、彼女は日本映画界に深く貢献してきた。特に是枝裕和監督とは、深い関わりがあったそうだ。彼女は、計6作もの是枝作品に出演し、すべての作品を様々な国際映画祭受賞に導いている。彼女の告別式での弔辞で、彼は「母のようだったあなたが、映画の中で最後に口にした言葉を棺の中のあなたにお返しします。」と綴った。彼女は生前に、是枝作品への出演は「万引き家族」が最後になるだろうと語っていた。そして、彼女が劇中で口にした言葉は、役柄の死の間際に放たれたものだった。彼女は、役柄の死と自身の死を重ね合わせ、役柄を超えた彼女自身の思いを込めて「ありがとうございました」と口にしたのだろう。

 彼女は亡くなった今もなお、多くの作品の中で生き続けている。生きることや愛することの大切さを訴え続けた彼女を、私たちはこれからも忘れない。