(日進月歩)大学ファンド 期待と不安

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 5月18日、参議院本会議において、与党などの賛成多数により「国際卓越研究大学の研究及び研究成果の活用のための体制の強化に関する法律案」が可決、成立した。国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)に設置された10兆円規模の大学ファンド(基金)の運用益を、世界最高水準の研究大学となる可能性を有する大学に重点的に配分。大学は、研究環境を充実させるためにそのお金を使うことができる。

 近年、日本の大学は良質な論文数の相対的な低下や若手研究者のポスト・博士課程学生の減少、世界トップクラスの大学との資金力の差の拡大といった問題を抱えている。

 そこで2020年度から、政府主導で大学ファンドの設立が始まった。大学ファンドとは、日本の大学の研究を財政面で支援し、日本の大学の研究力を世界最高水準にすることを目指す政策だ。政府がつくった10兆円の基金を株式などで運用し、得た利益を「国際卓越研究大学」に認定された数校に年数百億円ずつ配分するという。

 今年度中に対象大学の公募を始め、来年には支援を開始。段階的に対象校を増やしていく方針だ。ただし、対象大学に選ばれるには年3%の事業成長や、優れた研究成果を定期的に創出することなどが求められる。

 この制度は日本の大学の研究力の飛躍的な向上が期待される一方で、問題点もいくつか見受けられる。

 まず、支援が受けられる対象校とそれ以外の大学との格差が広がってしまう。支援を受けた大学の研究力は飛躍的に向上するかもしれないが、その他の大学の研究力は変わらないからである。

 また、事業成長を重視することで、すぐに成果が出て利益を得やすい分野に研究が偏るおそれもある。成果が出にくく利益を得づらい分野の研究が冷遇されてしまうという学問の自由が脅かされる危険がある。

 我々が自由に学問に取り組む環境が脅かされる不安もあるが、今後の政府の方針に期待したい。

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