(タイムスリップ)漫画家 竹内良輔さん 「子供の頃の延長だからこそ」

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 1980年代から90年代前半は「ジャンプ黄金期」と呼ばれた時代。集英社発行の週刊少年ジャンプは時に500万部以上の売り上げを記録し、多くの子供たちが漫画家に憧れた。関西学院大学経済学部卒業で、現在漫画家として活躍する竹内良輔さんもその一人だ。

 本格的に漫画を描いたのは高校3年の春。新人漫画家を対象にした集英社主催の「手塚賞」に投稿した。しかし結果を残すことができず、大学進学を決める。大学2年の時に挑戦した週刊少年ジャンプ主催の「天下一漫画賞」で最終候補に。そして再び「手塚賞」に挑戦し「47th dreaming」で佳作を受賞した。

 「漫画家としての最低限の条件は満たせていたのかなとか、描いてもいいんだよと背中を押された気分だった」と顔をほころばせた竹内さん。これが、漫画家としての第一歩だった。

 「働くのがイヤ」だった大学時代。ほとんどアルバイトをしなかった。では、漫画家として働く原動力は何なのか。「原動力はない、強いて言うならまっさらな紙に毎月45ページのネームを書き上げた時の達成感がやりがいと言えるかもしれない」。これが導き出した結論だった。

 「漫画を描くことを労働だと思ったことはなくて。もちろんプロ意識はあるけど、子供の時の延長と考えている」という。また「自分の長所は描いたものに駄目出しをされてもなんとも思わない、ショックを受けないところだと思う」と分析する。むしろ「もっと面白くできる、より高みを目指せる」と言われているようでうれしい。そこには当然「やらなきゃいけない」という義務感もない。

 構成、原作作家としての活動が多い竹内さん。キャラクターの演技やストーリー、セリフをコマで割ったネームと呼ばれる下書きを制作するため、ネーム作家とも呼ばれる竹内さんはオリジナル作品と原作がある作品、どちらのネーム作品も手掛けている。

 例えば『ST&RS -スターズ-』は、竹内さん自身が原作のSF作品だ。「読者になじみの薄いテーマということもあったが、オリジナル作品はすべて、読者にとっては初めて見るキャラクターということになる。そこではいかにして読者にインパクトを与え、覚えてもらうかが重要になる」

 一方『憂国のモリアーティ』はコナン・ドイル原作のシャーロック・ホームズシリーズが原案のピカレスク作品。「原作のある作品では、読者にとってなじみのキャラクターとなじみの世界観が既に存在するので、そこでは読者の期待にいかに応えるか、読者の想像をいかに裏切るかを考えないといけない。また漫画でもあるので、原作を知らない読者も多く読むことになる。そこで、オリジナル作品で培った方法も合わせて実践していく。その正しい認識こそが多くのファンを納得させ、新規の読者を獲得することにつながっている」

 「みんなが知ってはいても直接は見たことや読んだことがないようなものにたくさん触れてほしい。そしてその作品の根底に流れているものや裏側にあるものを分析してほしい。ただ単に見たり読んだりすることに意味はなくて、それに対しての確固とした自分の意見を持つことが大事。まずは、自分が何を知らないのかの把握を出発点にしてみてもらえるといいと思う」(西本明日華)

【竹内良輔さんコメント】

 自分はどういう人間なのかを理解するために、大学の4年間は本当に貴重な時間だったと思います。
 何が好きで、得意なのか。何に対して怒り、悲しむのか。
 客観的に自分を見ることが出来れば、迷った時に自分を助けてくれます。自分はその期間に、やっぱり漫画を書いてみたいと思って大学とはあまり関係ない業界に手を伸ばして進路を決めましたが、ゼミの先生は漫画を描いていた僕のそんな学外の活動も喜んでくれた覚えがあります。そんなことが出来たのも自由と時間がある場所だからこそ。
 自分を見つめ続け、残りの学生生活を悔いなく過ごしてください。

書き下ろしイラスト=本人提供

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