「学生さんを守ろうという思いはみんな持っていますよ。口には出さないですけどね」。背筋を伸ばし、笑顔で話すのは、関西学院大学に出入りして約2年になる警備員の男性(42)だ。
関学大の警備員は、横断歩道での誘導や門衛、構内の巡回、学部棟を始めとする施設の鍵の管理といった業務を担っており、大学生活を陰で支えている。
男性が警備の仕事に出会ったのは20歳の時。警備員のアルバイトをしていた友人に誘われたのがきっかけだった。初めは「誘導や施設の入り口に立っているだけの仕事」というイメージを持っていたが、施設の鍵の管理や巡回など他にも業務があることを知り、警備員のイメージが180度変わった。
何もない平穏な日々が当たり前という警備の仕事。ただ、屋外の業務で道案内をした時や近隣住民の手助けをした時に「ありがとう」と一言言ってもらえるだけでうれしく、励みになるという。
「アルバイトから始めて今日まで続けるなんて思っていなかった」と語る男性。20年以上続けてくることができたのは「しんどい時に自分を見てくれていた上司や、失敗した時に注意してくれる人がいたから」。
警備員に求められる能力も、時代とともに肉体労働からサービスに変わってきたと感じるという。資格の勉強をしている警備員も比較的多く、男性も自身の業務の幅を広げるため、社内で資格試験を受験する機会があれば受けるようにしているという。これまでにサービス介助士などの資格を取得し、現在は施設警備業務に挑戦しようと考えている。
「警備員さんも陰で努力してるんやっていう目で見てくれるとうれしいし、たまに『ありがとう』って言ってもらえるとなおさらうれしいかな」とはにかむと、制帽をかぶり業務に戻った。(吉永美咲)