商品を通じてお客様を笑顔に 井村屋グループ大西安樹社長

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大西安樹社長=2025年11月17日、井村屋グループ株式会社本社、山下結大朗撮影

 長年多くの人に支持されてきた「あずきバー」や「肉まん・あんまん」。これらを製造する井村屋などを傘下に束ねているのが、井村屋グループ株式会社だ。弊部は関西学院大学法学部法律学科のOBで、井村屋グループ株式会社代表取締役社長(CEO兼COO)である大西安樹氏にインタビューを行った。

―大学時代

 一年の刑法のゼミと四年の民事訴訟法の授業は今でも思い出しますね。まあ勉強はしなかった部類ですかね。仲間と徹夜で麻雀して、朝一緒に釣りに行ったりはしました。一匹も釣れずに帰りましたけど。

―当時の井村屋製菓に入社した理由

 進路について特に考えていませんでしたが、メーカーに行きたいと思っていました。自分が働いたことによる社会への貢献が形になった方がいいのかなと当時は考えていました。

―コロナ渦以降業績が向上している理由

 業績は前年、その前にどういう準備をしたかということが繋がっていると思っています。例えば、新しい工場を作るといった設備投資が成果として出てきたと言えます。また、社員に頑張っていただいているということです。

―2024年度から始まった中期計画「Value Innovation 2026」の狙いと現状

 単年度計画の前に中期計画というのを策定して、それを毎年、ローリングしながら経営をしています。今回、中期計画を立てた際には、それ以前に大型投資をしていまいた。よって今回の中期計画はその投資の成果を表すとともに、その先に向けた成長のための投資ができるように財務体質を強固にするターンと捉えていました。一年目に計画した数値は達成しております。二年目の上半期も達成しておりますので、ちょうど半分が経ったところですけど、数字上は達成できています。ただ、残りの半分の期間については、経営環境が少し変わってくるのではないかと捉えているので、一年半後、これまでのように順調に計画を達成できるかは不透明ですね。

―今後の経営の展望

 成長を図るということにおいては、既存事業を強化していくことがひとつの大きな策です。既存の「あずきバー」や「肉まん・あんまん」は順調に伸びており、現在、「あずきバー」の新しい工場を建設中です。また、「肉まん・あんまん」は「包む」という今の技術を活かして、飲茶など横に広げることができる商材と捉えています。一方で、次の「あずきバー」を作るという新規の取り組みが必要になります。新しい事業と既存の事業の強化を一緒に進めていくことが大切であると思っています。

―社会の中での井村屋の在り方

 パーパスという言葉をご存知だと思います。この会社は何のために存在しているのですかということです。私ども井村屋グループは「おいしい!の笑顔をつくる」というパーパスを掲げています。お客様に商品を通じて笑顔になっていただきたいという理念です。それに加えて、サステナブルな経営が必要です。企業が営利目的だけではなく、地域環境や地域社会にも配慮しながら、経営していくことが求められています。

―目指している企業風土

 一言で言えば、家族的な経営をすることを目指しています。社員同士が家族のように思える環境にし、その中で、ひとりひとりが自発的に考え、動ける会社であればいいと思います。働いていて楽しいなと感じていただけるようにしたいです。

―人材育成の考え方

 教育を担当していたことがありまして、当時考えていたことは、金太郎と桃太郎のお供のような社員になってもらえればと思っていました。金太郎というのは、金太郎飴のことです。金太郎飴はどこを切っても同じ顔が出てくるじゃないですか。つまり、井村屋グループの社員にはベースとして、同じような考え方を持ってもらうということです。一方で、桃太郎のお供はサル、キジ、イヌのようにプロフェッショナルな人材として育って、活躍してもらいたいということです。だから、両方の教育をしなければならないと思い、そのためのカリキュラムを組んでいます。また、システム思考研修というものをずっと行っています。システムというのはつながりということです。一つのことを解決しても、他に影響が出てくるのではないかと考え、問題を解決するための本質を理解できるようにする研修を行っています。これは他の企業にはない研修プログラムかなと思います。

―「あずきバー」をさらに広めるために必要なこと

 消費者の購買データによると「あずきバー」を購買していただいている年齢層は高くなっています。その中で、「あずきバー」というブランドの認知を高めていきたいです。「あずきバー」はあずき、砂糖、水飴、塩のすごくシンプルな原材料でできており、添加物は何も入っていません。そのことに併せて小豆の健康性をしっかりとPRしていきたいと思っています。2007年には、毎月一日を「あずきの日」、七月一日を「井村屋あずきバーの日」として、日本記念日協会に認定していただいています。暑い夏をあずきの健康性を活かした「あずきバー」を食べて、乗り切ってもらいたいという思いで、「井村屋あずきバーの日」を定めました。これを契機に毎年七月一日前後に「あずきバー」のサンプリングを東名阪中心に実施しています。

代表商品のあずきバー=井村屋グループ株式会社提供

―「あずきバー」以外の商品

 ネクスト「あずきバー」は何だという中で、最近、ようかんが伸びています。防災用のようかんやエネルギーを補給することができる「スポーツようかん」など若い世代の方にも手にとっていただきやすい商品を提供させていただいております。

簡単にエネルギー補給ができるスポーツようかんあずき=井村屋グループ株式会社提供

また、アイスクリームにおいては、「やわもちアイス」が育ってきています。中心になる二種類の商品と季節限定商品を展開しています。その他にも、あずきの缶詰で「ゆであずき」という商品が出ているのですけど、こちらも業界の中ではトップのシェアになっております。「やわもちアイス」などをスーパーで若い世代に買っていただいているのを見ますと嬉しいですね。

おもちとつぶあん、バニラアイスを組み合わせたやわもちアイスバニラ=井村屋グループ株式会社提供

―2021年に酒事業に参入した理由

 三重県多気町にある「VISON」という施設でお酒を出すという構想がありまして、そのときに当社にお声掛けいただいたという経緯です。当社は「肉まん・あんまん」の生地を発酵させる技術はあるのですが、それとは違うお酒の発酵の技術はなかったので、新たなプラスの要素にしようと参入しました。先日行われた名古屋国税局の酒の鑑評会で、五六の酒蔵が出品した中、一位の賞をいただきました。これは大変嬉しいことでした。

―大阪・関西万博では公式ライセンス商品の販売やあずきの啓発をするイベントを開催

 何かしら次の成長に向けたきっかけとするための取り組みとして万博に関わりました。そこでライセンス商品を販売したり、イベントを開催したりして、当社の中心的な位置付けであるあずきを来場された皆さんに知ってもらえるようにと思いました。成果としては、ライセンス商品の売り上げはほぼ計画通りでしたし、あずきの認知を高めるイベントには、本当に多くの方に参加をしていただきました。ライセンス商品を展開していく中で、今まで取引のなかった販売先と関係性ができたことも、今後のプラスになると思います。

―大学での学びで今に活きていること

 僕自身の法学部でやっていたことの中で言うと、法学には帰納法と演繹法の両方が必要だと思うのですよ。例えば、答えを先に出して、その答えに行くためのプロセスを求める。一方で、状況全体を網羅しながら一つの結論を導く。当時はそういうことは考えてなかったけど、両方とも法学部で自然と身につきました。それを全部活かせているわけではないですよ。そういうような考え方はできるようになったかなとは思います。

―学生へのメッセージ

 学内のことでも、それ以外のことでも、学生時代にできることはやってもらいたいですね。学生時代にしかできないことってあると思います。それが何なのかを自分で見つけて、それに取り組んでいただけたらいいのかなと。社会人になったら長い休みがないですからね。

―井村屋について関学生に向けて

 OBが社長をやっている会社だなと思い出していただけたらと思います。

(聞き手・仲悠士)

大西 安樹 氏(おおにし やすき)

井村屋グループ株式会社代表取締役社長(CEO兼COO)

三重県伊勢市出身。1982年関西学院大学法学部法律学科卒業、井村屋製菓株式会社入社。2008年執行役員 経営企画統括部長。10年上席執行役員 経営戦略部長。11年IMURAYA USA出向。14年常務取締役 井村屋グループ(株)部門副統括。15年常務取締役 同社部門統括。16年代表取締役社長(COO)。19年井村屋スタートアッププランニング株式会社代表取締役社長。23年より現職。

井村屋グループ株式会社

井村屋グループ全体の経営戦略立案、全体最適化を担う。創業1896年、設立1947年。

業績(連結、2025年3月期):売上高511億2100万円、経常利益31億6900万円。

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