キテンゲで「輪」を紡ぐ。 Kitenowaルワンダのフェアトレード

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

Kitenowaの方々 写真左から、寄谷頼良さん、岡本将希さん、森本亮太さん=2025年11月2日、西宮上ケ原キャンパス文学部棟、杉谷拓樹撮影

「人と人とが繋がって、情報が広がっていけばいいなって」。学生団体「Kitenowa」(キテノワ)の代表、岡本将希さん(人間福祉学部2年)の言葉だ。

 キテノワはアフリカのルワンダとのフェアトレードを行い、布雑貨を販売している。活動を行っているのは、ルワンダを訪れた経験のある人間福祉学部社会起業学科の8人。普段は神社などで開かれるマルシェに出店し、定期的に商品を販売している。

 キテノワの商品を実際に製作しているのは、ルワンダのニャンザという町で活動するグループ「Umucyo・Nyanza」(ウムチョニャンザ)だ。「キテンゲ」と呼ばれる布を用い、女性14人が協力して布雑貨を作り上げている。

 キテンゲはアフリカで愛用されている布で、ユニークでカラフルなデザインが特徴的だ。キテノワの「Kite」はキテンゲを表している。また、「着て」と「来て」が掛けられている。

 11月1、2日に西宮上ケ原キャンパスであった新月祭では、文学部棟の一室を使用し雑貨を販売した。

新月祭で販売された布雑貨=2025年11月2日、西宮上ケ原キャンパス文学部棟、杉谷拓樹撮影

 ネクタイやスカーフなどのファッション雑貨に加え、トートバッグやスマホストラップといった携行品、ガーランドやタッセルなどのインテリア雑貨を販売。普段使いしやすい商品を幅広く取り揃えた。

 ネクタイやスカーフは、ウムチョニャンザに日本人学生の立場から提案をし、初めて新商品として販売したという。

 商品の販売のみならず、お客さんとの対話を通してルワンダを広く知ってもらうため、ルワンダの紹介ブースも設け、現地の空気を伝えた。

 キテノワの8人は学科のフィールドワークプログラムでルワンダを訪れ、お互いに知り合ったという。当初ウムチョニャンザを訪問したのは8人のうち4人のみだった。しかし、他の4人もウムチョニャンザの活動に心を動かされ、キテノワとして活動を始めた。

 その原動力は、ウムチョニャンザの女性たちから感じた、特別な「温かさ」であった。その温かさは単なる温かさではない。

 1994年4月7日、ルワンダでは、フツ族と呼ばれる多数派民族とツチ族と呼ばれる少数派民族の対立により、大規模なジェノサイドが発生した。フツ族の過激派がツチ族とフツ族の穏健派を大量虐殺し、犠牲者数は80万人以上にも上ったと言われている。

 ウムチョニャンザの14人は、その被害者女性たちと、加害者の家族を持つ女性たちである。そんな対照的な立場の女性たちが肩を並べ、布製品を作り、「和解」と「共生」への道を日々歩んでいる。

 ウムチョニャンザについて、岡本さんは「活動を通じた人と人との繋がりで、理解し合うことのできる環境」だと表現する。さらに、「理解を恐れず受け容れようとする力がある」と強く語る。

 その力は日本人に対しても表れる。同団体の吉田隼さん(人間福祉学部2年)は訪問した当時を振り返り「『見ず知らずなのに来てくれてありがとう』ってすごく迎え入れてくださって、本当に、温かみを感じた」と感情をにじませた。

「Umucyo」はルワンダ語で「光」を表す。ウムチョニャンザの温かさは、まさに和解と共生への光と言える。

 ただルワンダをはじめ、アフリカへは未だネガティブな印象を持つ人も少なくない。その実情に対し岡本さんは「コミュニケーションを通してステレオタイプはなくしたいです」とまっすぐに語った。

 キテノワは集客面では課題を抱えており、同団体の寄谷(ら)(い)さん(人間福祉学部2年)は「もっと広めるためにSNS活動などできることはあるんじゃないかなと思っています」と言う。だが岡本さんは「SNSよりも先に人と人との繋がりができてほしい」と強調する。

キテノワの「wa」には3つの意味が込められている。「和」と「話」、そして「輪」だ。

「和」にはウムチョニャンザの和解の意味が示されている。また、「話」にはルワンダへの理解を深めてもらうため、お客さんとの対話を大事にしたいという想いが込められている。そして「輪」には、商品の売買を通して、人と人とが繋がる新しい出会いがあってほしい、という願いが込められている。

 ルワンダで心を動かされたキテノワは、販売からの収益をすべてウムチョニャンザに寄付している。

 キテノワの目標について、岡本さんは「人の心を動かしていきたい。商品を売るだけじゃなくて、その人が生きる上で頑張れるような原動力となりたい」と願いを語った。

 光を浴びたキテンゲは、新たな出会いを紡いでいく。キテノワのように温もりに溢れた輪が、そこには生まれる。その輪が世代や国境を越え、穏やかに広がっていくことを、心から願ってやまない。

(高尾亮央)

ウムチョ・ニャンザオンラインストア
https://umucyonyanza.stores.jp/

キテノワ公式インスタグラム
https://www.instagram.com/kitenowa_rwanda?igsh=MXFodnhnMzV4YW5lbA==

関連記事

ピックアップ記事

  1. 関学柄のネクタイを締めて取材に応じる横山英幸大阪市長  弊部は6月4日、大阪市役所本庁舎で関…
  2. 新聞総部へのサインを見せるりょつさん=2月17日、F号館前、石岡孝憲撮影  関西学院…
  3. 本インタビューは2024年11月に行われ、4月1日発行の関西学院大学新聞866号に掲載されました。…
  4. 応援団総部による演舞の締めくくり=4月29日、大阪・関西万博会場内、田爪翔撮影  応…
  5. 関学OGの参加者からの質問に答える玉木氏=2025年1月27日、東京丸の内キャンパス、田爪翔撮影 …

アーカイブ

令和6年能登半島地震関連報道
令和6年能登半島地震関連報道
ページ上部へ戻る