関西学院大学総合政策学部で米国政策を研究している実哲也教授は、人生の大半を日本経済新聞の記者として過ごした。原点は「自分の目で確かめたい」という探求心にあった。新聞記者の役割を「疑問に感じたことを自分の目で見て記事にし、社会について考える材料にしてもらうこと」と考えた。自分の興味関心を仕事にできることに魅力を感じ、1982年に日本経済新聞の記者になった。
入社後は、経済記者として日本銀行や大蔵省(現・財務省)の取材を担当。経済政策を問う記事を多く書いた。85年にはニューヨーク特派員として第二の記者生活を始めた。
赴任当初は取材の傍ら、現地の大学の講義を聴講していた。当時から、今の大学教授としての生活につながる学究的な一面があったという。
2004年にはワシントンに支局長として赴任。イラク戦争直後の米国は、テロリズムの脅威や不安定な経済により、漠然とした不安に包まれていた。社会は二極化し、「多様性を尊重する米国」が変容しつつあった。
取材では、米国民の潜在的な考えや、感情を浮かび上がらせることを意識していた。国家ではなく、あえて国民に焦点を当てることで、人々が何を考え、米国がどこに向かうのかを考えた。
19年、関西学院大学総合政策学部の教授になった。海外特派員をした経験を生かし、米国の政策論やメディア論を講義している。学生には、多様な価値観を持った人に会ってほしいと考えている。記者として大切にしてきた探求心を持ち、学生との議論を深めてゆく。(吉原未来)