(教授の背中)法学部・安部祥太教授 熱い心と冷静な目で社会を考える

教授の背中

 安部祥太教授は、刑事法のうち刑事訴訟法や刑事政策などについて、韓国を主な比較対象として研究している。日本における韓国刑事法研究の第一人者である。

 刑事訴訟法とは、犯罪捜査や刑事裁判などに関する法律である。刑事政策とは、主に刑罰や刑務所処遇などについて扱う学問領域だ。

 犯罪被害者に関する本や刑事ドラマがきっかけで、中学生の頃から刑事法に関心があった。その後、大学の法学部で学ぶなかで、冤罪事件である「足利事件」に興味を持ったと振り返る。足利事件がきっかけとなり、再審や取り調べ、無期懲役、仮釈放に関心をもった。そのことが現在の研究にもつながっている。

 「刑事司法手続で、被疑者や被告人、被収容者とされた個人は、強大な公権力と対峙することになる。その場面では、国家が個人をどう取り扱うかが如実に表れる。刑事法を研究することで、その国の人権水準や社会の成熟度を知ることができる」。

 今年度からの2年間、安部教授は韓国で在外研究を行う。研究テーマは「韓国の刑事施設で憲法や国際人権法がどう機能しているか」についてである。

 日本の裁判所において、憲法の積極的な解釈や国際法に則した判断が行われているとは言い難い。また、日本は国内人権機関を設置していない。一方、韓国は憲法裁判所と国家人権委員会を設置しており、憲法や国際人権法の理念を実現する制度が整っている。

 安部教授は、刑事法の様々な分野について継続的に書籍や論文を執筆するなど、精力的に研究に取り組んでいる。また、授業やゼミでも情熱を持って教育・指導している。

 授業では、単に刑事法について教えるだけでなく、「刑事法をきっかけに社会に目を向けてほしい」と学生に語りかける。その理由について、「授業を受けた学生にとって、何らかのきっかけになってほしい。熱い心だけでなく、授業で得た冷静な目でもニュースやドラマを見てほしい」と話した。

 最後に、「学生にとって、色々な出来事が進路選択のきっかけになる。可能性に溢れた学生には、目標を追い求めてほしい。頑張っても目標を達成できるかどうかは分からないけど、自分で定めた目標に全力で挑戦してみてほしい」と熱いエールを送った。

【足利事件】有名な冤罪事件。裁判においてこの事件の犯人とされたSさんは、無期懲役の刑で刑事施設に収容されていた。2009年に始まったこの事件の再審公判において、捜査段階でのDNA型鑑定の誤りと虚偽自白の強要が明らかになり、無罪となった。

(今村早織)

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