芥川賞作家・松永K三蔵さんが講演 AI時代の純文学の意義と「知性」とは

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学生時代について語る松永K三蔵さん=7月3日、大学図書館ホール、佐藤朝陽撮影

  関西学院大学図書館は7月3日、大学図書館ホールで、Library seminarを開催した。今回は「バリ山行」で第171回芥川賞を受賞した作家の松永K三蔵さん(文学部卒)が、「わからないままで生きること。」をテーマに講演を行った。約80人の関学生らを前に、AI(人工知能)によって答えが容易に得られる時代の純文学の意義と「知性」とは何かについて語った。

 松永さんは関学大を卒業した後、障害者福祉や建築、不動産の分野で働き、転職を重ねた。苦しい経験もあったが、それでも幸せに生きてこられたのは「(これらの経験は)全部小説に書けるな」という思いに支えられたからだった。実際に、自身の経験が「バリ山行」にも生かされていると明かした。

 また、松永さんは、歴史には残らない人の痛みがあることや「最大多数の最大幸福」からこぼれ落ちるものがあることを指摘した。そのうえで、文学の役割は「記録に残らない痛みを書いていく」ことにあると語った。

 さらに、純文学とは「本質を書く」ものだと説いた。なぜ生きるのか、なんの為に生きるのか、この世界とは、人間とは、人生とは……。このような答えのない問いに向き合うときに文学は立ち現れる。生きていると、自分が本当に何を求めているのかが分からなくなる。そのとき、文学によってそうした本質に気づけるのではないかと語りかけた。

純文学の本質について語る松永K三蔵さん
 続けて、不条理や答えのない問いがあるなかで、知性とは「答えの出ないことにずっと留まり続けること」なのではないかと説いた。また、私たちはAIに聞いても答えの出ないことに可能性を見出すのではないかと投げかけた。

 松永さんは、AIにメジャーリーガーになれる確率を聞くと0.03㌫と回答することを例に挙げ、もし大谷翔平選手がその数字を見て夢を諦めていたら、現在の活躍はなかったと指摘した。

 また、AIは芥川賞を受賞できる確率も同様に低いと答えるが、松永さんは「書きたいから書いてきた」と振り返った。そのうえで、AIが示す確率は統計に基づく数字にすぎず、「自分自身という変数によって結果は変わる」と強調した。

 最後に、講演のテーマについて、「分からないままで大学を卒業して、はっきり言って今も分からないままなんですよ。ただ、それすらも楽しんできたんです」と率直な思いを明かした。

 松永さんは終始ユーモアを交えながら語り、会場から何度も笑いが起こった。

 当日参加できなかった関学生や教職員からの多数の要望を受け、学内限定で本講演の録画映像が9月30日まで公開されている。 

(今村早織)

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法学部法律学科3年 主に広報とデスク(部員が執筆した記事の確認など)を担当。部員が執筆した記事のファン。特に興味のある分野は刑事政策・社会福祉・まちづくり・ひとなど。

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