音楽ユニットYOASOBIの楽曲『好きだ』の原作である『ヒカリノタネ』は、直木賞作家の森絵都氏が手がけた恋愛小説だ。小説と楽曲が連動する点が本作の特徴である。
物語は高校2年生である坂下由舞が、幼馴染である椎太に対して4度目の告白に踏み切れず、友人の樋口一花に相談するところから始まる。
過去3度、椎太に振られた由舞は、今までの告白を後悔していた。初めての告白だからこそ生まれる驚きやときめきが、繰り返すうちに薄れてしまったのではないかと悩んでいた。
ある時、由舞は一花との会話をきっかけにタイムトラベルの存在を知った。過去へ戻ってやり直せるなら、失った驚きやときめきを取り戻せるのではないか。そう考えた由舞は、過去の告白をなかったことにして、「初めての告白」をやり直そうとする。
告白を消していく中で由舞は、自分の好きなものやこれまでの選択が椎太への告白と深く結びついていたことに気付く。過去の告白と向き合った末に、由舞は4度目の告白を決心する。
過去の失敗や後悔をなかったことにしたいという由舞の悩みには、共感する人も多いだろう。春学期を通じて、多くの人がサークルや部活動など新たな人間関係を築いてきたと思う。その中で、由舞のように失敗や後悔を抱えた人もいるのではないか。
本作では、由舞が過去の告白を消そうとする。しかし、物語を通して由舞は失敗した過去と向き合い、何度も振られた苦い経験も今の自分に繋がっていることに気付く。
過去の失敗や後悔をやり直したい、消したいと思い続けるのか。由舞のように受け入れ、前を向いて進んでいくのか。あなたはどのように向き合っていくのだろうか。
(佐藤朝陽)
