関西学院大学は9日、滋賀県および近江八幡市と、滋賀県公館(大津市)で連携協定を結んだ。協定締結式には村田治学長、三日月大造県知事、小西理市長が出席し協定書に署名し合った。締結式では、西宮上ケ原キャンパスの全体設計を手掛けた建築家「ウィリアム・メレル・ヴォーリズ」の功績や建築を通じて地域活性化と人材育成を行うことで三者が合意し、今後ヴォーリズ建築の保存や研究事業に尽力することを確認した。
ヴォーリズがキャンパスの設計に深い関わりを持つことから、大学は2021年に開設した建築学部に「ヴォ―リズ研究センター」を今年1月29日に設立。設立を機に、ヴォーリズが生涯にわたり居住した滋賀県と近江八幡市から協定を結ぶことを提案されたことがきっかけとなった。三日月県知事は「ヴォーリズ建築を通して、住まいや居場所を展開していければ」と話した。
三者は今後、ヴォーリズ建築の研究と保存、ヴォーリズを通じた地域活性化や地元小中高生と大学生との交流など様々な分野での協同事業を実施する予定だ。
大学にはヴォーリズ建築の保存に対する直接的な支援はないが、建築学部の角野幸博学部長は「既に建築設計図をPDFにアーカイブすることなどをしている」と説明し、今後アーカイブを学生の研究に役立てる姿勢を見せた。現段階ではヴォーリズに関する新しい講義を開講する予定はないが、実際の建築物を見学する機会を設けたいという。
大学関係者によると、今回のほか奈良県御所市との連携協定のように大学が県外と協定を結ぶ例は、就職に関する協定を除くと珍しいという。(柴崎辰徳、西村遼)
ウィリアム・メレル・ヴォーリズ(1880~1964・アメリカ生まれ)
20世紀に活躍し、西宮上ケ原キャンパスの全体設計にも携わった建築家。伝道者としても活動し、生涯にわたり約1400棟を設計した。現在も200棟あまりが歴史的建築物として残存している。建築学部の角野幸博学部長は「独特の様式を日本に持ち込んだだけではなく、日本の風土に組み合わせている」と評価した。