社会学部長の島村恭則教授=本人提供
民俗学と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。多くの人は古来の伝統を研究する学問を想像するだろう。
しかし、社会学部長である島村恭則教授(56)は「民俗学とは人々の間に生まれた非合理、すなわち俗を研究する学問だ」と語る。
例えば、世の中にはオカルトや疑似科学が存在する。他の学問ではその存在は否定的に見られるだろう。これに対して民俗学はそれらを否定せず、当事者の立場に立つ。どのような考えでオカルトや疑似科学が発生し、信じるに至ったのかを研究する学問である。
そんな民俗学を分かりやすく解説したのが『現代民俗学入門 身近な風習の秘密を解き明かす』だ。
民族学に関する質問とそれに対する22人の専門家の回答を島村教授が易しい言葉でわかりやすく編集している。また、かわいらしい絵や図がふんだんに使われており、読んでいて飽きない工夫がされている。
本書では、葬式や宗教など人々が民俗学と言われて想像するような話題の中に、「荒れる成人式」など民俗学として異質に思えるような話題が混じっている。
人々から生まれた俗を「民俗」と呼ぶのだから、誰に言われるでもなくなぜか荒れてしまう成人式も「民俗」の枠組みに当てはまるのだ。
民俗学は宗教から最新のミームまで幅広い分野を扱う学問であり、それらは全て私たちの身近に存在する。
もし興味を持ったら、『現代民俗学入門 身近な風習の秘密を解き明かす』を読んで、民俗学の世界に足を踏み入れて欲しい。 (山本麻衣子)