(教授の背中)人間福祉学部・藤井美和教授 死を含めてどう生きるか

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

藤井美和教授=2025年8月6日、藤井教授研究室、渡邊暖菜撮影

人間福祉学部の藤井美和教授は、死生学を研究している。死生学とは、死を含めてどう生きるかを考える学問である。神学、宗教学、哲学などの形而上的分野を含んだ学際的な学問であることが特徴だ。

藤井教授は、2025年4月、死生学などの専門家による学会「Association for Death Education and Counseling」において、「Academic Educator Award」を日本人で初めて受賞した。

大学では刑法を勉強し、新聞社に就職した。入社して6年目、神経難病を発症し、3日間で全身麻痺となり、呼吸すら困難になった。そして、全身麻痺のまま半年入院した。

3日前までは充実した生活を送っていると思っていたが、自分本位であったこと、そばにいてくれる家族を気遣ってこなかったことにはっとした。 

死に直面した時に見る世界は、普段見ている世界とはまるで異なっていた。それから生きることの目的や意味、人生そのものについて考えるようになった。

そして存在意義を見いだせず苦しむ人に自分ができることはないかと思い、会社を辞め、関西学院大学社会学部に学士編入した。修士課程を終了後、ワシントン大学でがん患者の生活の質(QOL)を研究し、博士号を取得した。その後、現在まで関学大で死生学の講義を行っている。

藤井教授のゼミ活動では、学生が好きなテーマを選択し、死に関する問題のディスカッションを行う。ゼミ生は、時には今まで培ってきた考えや意識に揺らいだり苦しんだりしながら、社会や世間の価値観を構成する社会の一員として、自身が持っていた価値観を見直す。

藤井教授は、学生には自分の考え方や価値観、いわゆる「ものさし」の根源を探ってほしいという。 

世の中の「ものさし」を受容しすぎると、その「ものさし」で測ることのできない自分自身を受け入れられない時がある。学生には「ものさし」を疑い、本当に誠実な生き方を問うてほしいと望んでいる。「私たちは何も持たずに生まれ、本当に大切なものは『ものさし』を身に着ける前からあるということに気付いてほしい」と話す教授の姿が印象的だった。 死ぬということはいかに生きるかを考えさせてくれる。生きることと死ぬことは別々ではなく、つながっている。生きるから死に、死ぬから生きるのである。

(山須田優)

関連記事

ピックアップ記事

  1. 関学柄のネクタイを締めて取材に応じる横山英幸大阪市長  弊部は6月4日、大阪市役所本庁舎で関…
  2. 新聞総部へのサインを見せるりょつさん=2月17日、F号館前、石岡孝憲撮影  関西学院…
  3. 本インタビューは2024年11月に行われ、4月1日発行の関西学院大学新聞866号に掲載されました。…
  4. 応援団総部による演舞の締めくくり=4月29日、大阪・関西万博会場内、田爪翔撮影  応…
  5. 関学OGの参加者からの質問に答える玉木氏=2025年1月27日、東京丸の内キャンパス、田爪翔撮影 …

アーカイブ

令和6年能登半島地震関連報道
令和6年能登半島地震関連報道
ページ上部へ戻る