(ヒストリー)阪神・淡路大震災、あの時関学は…

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1995年1月17日午前5時46分、兵庫県南部地方で地震が発生した。阪神・淡路大震災だ。我が国の人口密集地に発生したこの震災は、多数の死者、家屋の倒壊、焼失をもたらした。

また、本学にも被害をもたらし、学生15人、教職員8名の命を奪った。物的にも被害総額は10億3千万円にのぼり、構内には半壊した建物もあって復旧費の負担も多大なものであった。

入学試験、定期試験など大学運営の最重要期に起こった震災は、本学に様々な難題を突きつけたが、本学の各部局は見事に尽力し、後世に教訓も残した。今回はその軌跡を追いかける。(T・M)

本学での建物の倒壊は免れた。しかし、中学部矢内会館と心理学研究館ハミル館は半壊し、理学部研究室で出火した。壁面の剥落や亀裂、屋根瓦の脱落、窓ガラスの破砕、建物内部では実験機器や書架、書類棚の崩壊なども相次いだ。

幸い試験場となる校舎は入試までに修復可能な程度の損傷であった。当時、インターネットなどは無く、試験日を変更しても全受験生に周知することは困難である。大学当局はひとまず2月1日の入試実施に動くこととなる。

入試の実施に際し、最大の障壁は交通機関の寸断であった。特に、阪急今津線は門戸厄神駅と仁川駅の間で不通となっており、本学最寄りの甲東園駅には通じていなかった。阪急電鉄の協力により宝塚周りで受験生を誘導したり、教職員・学生が門戸厄神駅から誘導したりして混乱を最低限に抑えることが出来た。それでも、門戸厄神駅で下車した受験生は約30分、倒壊した家屋の多い道を通って試験場に向かうこととなった。混乱の中で行われる入試とあって、相当数の欠席を見込んだが、例年より1%多い程度であった。震災直後であっても受験生の努力がいかほどであったか見て取れる。

また、出願できなかったり、受験できなかったりした受験生に対して3月に救済の特別入試も実施した。こうして、震災直後の一大課題は完璧とは言えないまでも、受験生に対する不利を最大限に抑えて実施された。

もう一つ、大きな課題となったのは広報だ。当時、情報伝達は学内掲示が主体であった。しかし、多くの人が大学に来ることのできず、通信機能も麻痺している状況下で、入学試験や定期試験を控えており、様々な情報を敏速に受験生や学生に伝える必要があった。まず利用されたのは新聞広告だ。1月中だけでも5紙4回掲載され、次々と決定される情報を伝えた。受験生向けには入学願書受付の締め切り延長や入試日程など、在学生向けには休講、定期試験、追試、リポート締切日についてなどである。また、新聞が配送されていない被災地の受験生や学生に配慮してラジオのスポット広告も計110回放送した。

受験生や学生に対する情報伝達に加えて、報道機関に対する正確な情報発信も課題となった。震災直後は情報が錯綜し、「関西学院大学も倒壊し」といった誤った報道が全国紙に掲載された。このことから、電話回線の集中が解消されるにつれ、全国からの問い合わせが殺到した。

これらは本学の対応のごく一部に過ぎないが、災害に対応する危機管理マニュアルが無かったことから試行錯誤の対応に終始してしまった。この震災を教訓に日本の防災意識は高まり、日本全国の大学でも防災意識は高まった。各地の大学が危機管理を検討するにあたり、本学が被災地の大学としてした経験ははかり知れない価値のあるものとして評価されている。

1995年はボランティア元年と評価されるが、本学でも震災に際し、多くの学生が自発的な活動を行なった。本学の学生や高等部の生徒2500人余りがマスタリー・フォア・サービスの精神を発揮し、肉体的・精神的なサポートに買って出ている。その年には本学で「関西学院ヒューマンサービスセンター(HSC)」が発足し、組織的な学生ボランティア活動が行われるようになった。ボランティアに関しても、震災の教訓を経て、今日では学生ボランティアが本学の特徴の一つと捉えられるまでになっている。

出火した理学部研究室=関西学院広報室提供
受験生向け新聞広告=関西学院広報室提供
門戸厄神駅から歩く受験生=関西学院広報室提供

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