(障害者と防災)内閣府 青柳一郎政策統括官 「防災と福祉の連携を模索」

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 内閣府で防災行政の実務を担う青柳一郎政策統括官(57)が2月3日、関西学院大学新聞のインタビューに応じた。東日本大震災においては障害者の死亡率が被災住民全体の死亡率の約2倍となるなど、障害者を災害時にどう守るかが課題となっているなか、政府としての取り組みを説明し、今後の展望などについて語った。

 国は2013年、災害対策基本法を改正した。全市区町村に災害時に自力で避難が困難な人(要支援者)の氏名や住所、電話番号を載せる「避難行動要支援者名簿」の作成を義務づけている。総務省消防庁の調査では、19年6月時点で名簿は全国98・9%の1720市区町村で作成済み。ただ、市町村によっては名簿への登載を希望した人を名簿に載せる手挙げ方式をとっており、全ての要支援者が名簿に記載されていない可能性がある。青柳政策統括官は「今後は手上げ方式ではなく、登載者に漏れがないような名簿の作成を市町村に対して周知する必要がある」とした。

 「数としてはゴールに近づいてきている」と避難行動要支援者名簿の作成には一定の評価をしたが、名簿を活用して、誰が支援し、どこへ避難するかを決めておく個別計画の作成には課題が多い。全ての名簿登載者の個別計画を作成しているのは全国12・1%の208市区町村(同調査)と、思うように作成は進んでいない。何らかの形で法律への位置づけを検討中だが、法律による個別計画作成の義務付けは現状困難である。自治体によって財政面や人材面などの状況が異なる中、一定の義務づけを行うことで現場にかかる負担は計り知れない。個別計画作成の大部分は各自治体に委ねられている。国レベルで支援の体制を整え、現場を支援していく方法を模索中だ。

 また、防災部局と福祉部局の連携が最重要課題となっている。全国的に見ると福祉部局と防災部局の連携は不十分な状況にある。両部局の連携への第一歩として、ハザードマップと避難行動要支援者名簿を照らし合わせ、危険な地域に住む要支援者を把握する取り組みを始めようとしている。青柳政策統括官は「これまで連携が十分でなかった自治体においても、ハザードマップのような具体的な取り組みを通して、連携の促進を図ることが狙い。次の災害に備えるためにも、両部局の連携を身近なところから進めていきたい」とした。

 加えて、厚生労働省との連携も視野に入れている。厚労省には平常時における高齢者や障害者に対する取り組みや支援のためのシステムが存在する。それらと防災を効率的に円滑に結び付け、個別計画の作成に生かす方法を検討している。

 関西学院大学新聞総部の部員だった伊丹聡一朗さんを失ってまもなく半年となる。生前、災害時に障害のある人が苦境に置かれたことを気にかけ、防災への意気込みは人一倍強かった伊丹さん。関西学院大学新聞は遺志を引き継ぎ、災害時に障害者を取り残さないために今、どのような動きがあるのか追いかける。
 (この連載は6回掲載します)

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キャインタビューに応じ「福祉部局との連携も進めていきたい」とした青柳一郎内閣府政策統括官=2月3日、東京都千代田区永田町の中央合同庁舎8号館

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