奉安庫今も関学大に

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 太平洋戦争が終結して78年、戦前や戦中の記憶が風化しつつあるが、戦前の遺跡はまだ各地に存在している。        

 戦前、日本では天皇皇后両陛下の肖像写真である御真影や教育勅語の謄本を保管する奉安庫(奉安殿)を校内に設置するよう文部省が全国の学校に指示を出し、関西学院大学もその例外ではなかった。

 御真影の下付は制度上学校から申請する形を取っていた。しかし昭和3年以降、国は申請に消極的だったキリスト教系の学校に対しても下付申請するよう指導を強めた。昭和11年8月26日には関学大は国から出頭の命令を受け、ベーツ第4代院長が出頭して手続きを行うこととなった。

 ついに昭和12年2月3日、国から関学大に御真影が下付された。その日、ベーツ院長は学内の規程に則り、御真影の警護のため宿直をしたという記録が残っている。 

 関学大西宮上ケ原キャンパスの本部棟2階にある旧院長室(原則非公開)。部屋の壁には2枚の木製の扉と1枚の金属の扉が組み込まれており、開くとこじんまりとした空間が姿を現す。その中にはかつて御真影と教育勅語の謄本が収められていた。                                                                                 

 近年、ますます戦争体験者が減り、当時の記憶が風化しつつある。現代社会のなかで戦前や戦中の爪痕をどのように残し次の世代に伝えるかという深刻な問題が、関学大の奉安庫を通じて問いかけられているのではないだろうか。(前川勇)

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