
海外の民族音楽を生で聴くことができる万博。東欧の国・ハンガリーのパビリオンは森をイメージした建物だ。木組みの外装と葉に見立てた短冊状の装飾。「ひらひら」と日本語を使って言われるその装飾は、会場に吹く海風でたなびいている。

パビリオンの中に入ると出迎えるのはガラスアート。世界各国の言語が小さく織り交ぜられたアートは自然がモチーフだ。

通路を歩き、少し拓けた場所の天井のライトはスズランがモチーフだ。まるで来場者が小さくなったかのように感じる。

さらに奥へ進むと、暗いドーム型のシアターが広がる。シアターはライトによって星空のような印象を受ける。その光に包まれた空間の中央には、民族衣装をまとった女性が凛と立っている。彼女を取り囲むように椅子が配置され、来場者はそこに腰を下ろす。ざわめきが収まったころ、歌声と音楽、そして光の演出が一斉に始まる。歌はもちろん日本語ではない。
しかし、響き渡る声と身体の動き、音楽と光が織りなす表現は、言葉を越えて人々を魅了する。数分間の体験は没入している内にすぐに終わった。

インターネットが発達した現代では、どこにいても音楽を聴くことができる。だが、その場でしか味わえない音の震えや光の演出は特別だ。
また、パビリオン内のレストラン「ミシュカ キッチン&バー」ではハンガリーならではのパプリカがふんだんに使われた料理やワインなど、食文化を体験できる。
シェフのヴィダーク・ゾルターンさんは、日本でハンガリー料理を作るにあたって日本の玉ねぎやにんじんの甘さの調整が難しかったという。 また、ハンガリー人と日本人の味覚も考え、塩分を控えめにする工夫も行った。
物販コーナーにはハンガリーパビリオンのイメージに沿った製品や、マスコットキャラクター「ミシュカ」と「マリシュカ」をあしらったグッズなどが並んでいる。
ハンガリーパビリオンでは五感を使ってハンガリーを味わうことができる。
(田爪翔)