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分野を越えて社会を見る――客野尚志教授が語る総合政策の意義

 客野教授は、総合政策という言葉について「総合」と「政策」を分けて考える必要があると話す。「総合」は、さまざまな分野を幅広く学び、視点を多様にしていくこと。一方、「政策」は、課題を解決するために計画を立て、物事を動かす方向性を示すことだという。

 幅広く学ぶだけでなく、学んだことをどのように社会の課題解決につなげるか。その点に、総合政策学部で学ぶ意味がある。

 客野教授の専門である都市政策は、その考え方と深く重なる。都市には、年齢や職業、価値観、生活環境の異なる人々が暮らしている。都市の姿を考えるには、建築や工学の知識だけでは十分ではない。法律や経済、行政、地域社会など、複数の視点から考える必要がある。こうしたことから、客野教授は都市政策を「総合政策の縮図」と捉えている。

 現在の研究では、スーパーコンピューターを使い、都市の形や建物の高さ、形状の違いが暑さや風通しなどに与える影響を調べている。シミュレーションには、数学や物理、コンピューターサイエンスの知識が欠かせない。

 ただ、客野教授が見ているのは技術そのものだけではない。「最後は人が住む空間がどうなっていくのかを常に意識している」と話す。研究の先にあるのは、実際に人が暮らす都市の姿だ。

 都市の規模や建物の高さについて望ましい形を示したとしても、それがすぐに実現できるとは限らない。法律上の課題や経済への影響、地域の人々との合意形成も考えなければならない。客野教授は、自分一人ですべてを解決することはできないとしながらも、社会科学の知識を持つ教員や専門家と関わることで、より実現可能性の高い提案ができると考えている。専門分野を越えて一つの課題に向き合う姿勢は、総合政策学部らしさの一つだ。

 工学部出身の客野教授にとって、総合政策学部での研究環境は、自身の専門を社会課題へ広げるきっかけにもなった。工学では、特定の対象を深く掘り下げる研究が多い。一方、総合政策学部では、社会にある課題を出発点にして、解決のために何が必要かを考える。客野教授は、工学で身に付けた知識やシミュレーション技術を生かしながら、都市環境という社会課題に向き合っている。

 総合政策学部の学生について、客野教授は「社会を良くしたい、社会の問題をどうにかしたいという気持ちを持つ学生が多い」と印象を語る。知識を学ぶだけでなく、現実の課題を解決したいという意識を持つ学生が多いという。経済、法学、哲学、工学など、さまざまな分野の教員と話せる環境も、学生の視野を広げている。

 大学教員になる前の経験も、現在の教育や研究につながっている。客野教授は大学院で博士課程まで進んだ後、行政の現場で約10年間勤務した。行政の現場では、会議や行事を進めるための段取りや、関係者との調整を経験した。社会で物事を動かすには、専門知識だけではなく、周囲の理解を得ながら進める力も必要になる。こうした行政での経験は、現実の社会にある課題を多角的に捉え、その解決方法を考える総合政策学部の学びにも通じている。

 客野教授の歩みには、複数の分野から社会の課題に向き合ってきた姿がある。取材を通して見えたのは、総合政策学部での学びが、幅広い知識を得るだけのものではないということだ。異なる分野を結び付け、現実の社会にある課題の解決方法を考える。都市を見つめる客野教授の言葉から、総合政策を学ぶ意義が伝わってきた。

(張奕暄)

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