講演会の様子=6月22日、西宮上ケ原キャンパスG号館、渡邊暖菜撮影
人間福祉学部社会福祉学科・安藤ゼミは、6月22日、G号館で古橋拓也さん(社会学部社会福祉学科卒)による講演会「ハワイの司法福祉と社会復帰支援から学ぶ」を開催した。同講演会は人間福祉学部研究会補助行事として行われた。米国ハワイ州で若者の社会復帰支援を行うカワイロア若年者司法プロジェクトでの活動など、古橋さん自身の経験をもとに日本・ハワイにおける司法福祉や若者支援について語った。
古橋さんは、卒業論文執筆をきっかけに非行・犯罪に至った人々の社会復帰支援に関心を持ち、卒業後は国内で法務教官、保護観察官等として勤務した。そして、米国で犯罪被害者支援と加害者処遇の調和について研究し、帰国後は法務省や医療少年院での勤務に加え、国際協力業務に携わった。それらの経験を通じて、若者支援について「より深く理解して自分の言葉で伝えたい」という思いが芽生えたという。
現在は、ハワイ大学マノア校大学院博士課程に在籍しながら、カワイロアというハワイの若年者司法プロジェクトで調査・研究を行っている。 カワイロアとは、ハワイ唯一の少年院(Hawaii Youth Correctional Facility)を中心として、敷地内に若者支援をする複数のNPO団体を併設し、協働する世界的にも稀有なプロジェクトだ。
1778年、英国人のキャプテンクックが航海中にハワイ諸島に立ち寄ったことにより、ハワイ先住民は初めて西洋人と出会う。その後の西洋人による影響や支配の中で、伝統的なハワイアンの文化や生活は追いやられてきた。また、ハワイでは現在も歴史的に続く人種格差が様々な領域で課題となっている。実際に、少年院に収容される若者の多くがネイティブハワイアンや太平洋諸国にルーツを持ち、自らの出自がネイティブハワイアンであることに誇りを持てない者も少なくない。
こうした現状を踏まえ、カワイロアでは、非行や犯罪に至った若者たちに罰を与えるのではなく、癒やすことを目的とした支援が行われている。若者たちがハワイアンであることの誇りを取り戻し、社会復帰するための支援が重要だと古橋さんは語る。ハワイの非行・犯罪の背景や根幹にある問題に着目し、社会全体に向き合おうとしているのである。
日本の非行・犯罪においても、問題の根源や本質について考える視点が必要だという。子どもの非行等の問題の本質はどこにあるのか、と古橋さんは問う。犯罪や非行を個人の問題としてのみ捉えるのではなく、歴史や社会などを含めた構造的な問題として捉え直すことで、本質が見えてくる。このような視点こそが若者の非行・犯罪からの立ち直り支援、ひいては社会全体における若者支援に必要なのである。
今回の講演会を通して、参加した学生たちはハワイでの実践や日本の若者支援について学んだ。支援の在り方だけでなく、社会問題とその背景のつながりについて考えを深める貴重な機会となった。
(渡邊暖菜)

