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【教授に聞く】トランプ政権と福音派 彼らの背景には何があるのか

 共和党の保守強硬派の中心人物として知られるほか、不動産業の富豪としても著名であり、2024年の大統領選で返り咲きを果たしたドナルド・トランプ大統領。

 トランプ氏はキリスト教への信仰をたびたび強調するが、その政治的支持基盤の一つとしては福音派が知られている。

 なぜ彼らはトランプ政権を支持しているように見えるのか、アメリカのキリスト教に詳しい法学部の大宮有博教授にトランプ政権と福音派について見解をうかがった。

 トランプ政権と福音派の関係を理解する上で重要な点として、大宮教授は「福音派は伝道に熱心な人々を横断的に含む一枚岩ではない一種の潮流であることを理解する必要がある。福音派は、プロテスタント内の教派を横断して存在する、いわば『ガスのような存在』だ」と話す。

 教授によると、福音派にシンパシーを感じる人々のうち、実際にトランプ政権を支持しているのは、世間のイメージとは異なり全体の半分程度だという。一方、トランプ政権を支持する福音派の人々はかなり強い支持をしているため、結果的に福音派がコア支持層になっているように見えるというのが、大宮教授の見立てだ。

 では、その熱烈なトランプ支持を示す人々の正体は何なのか。

 大宮教授は、この層について「彼らは近年になって突如現れた存在ではない。宗教保守の政治参加は過去にも見られた。しかし、私にはトランプさんが神話を作り出してMAGA思想と福音派を結びつけ、福音派をキリスト教ナショナリズムに変えていった様に見える」と独自の見解を示した。

 宗教保守の政治参加自体は、20世紀初頭のファンダメンタリズム運動に端を発する。レーガン政権やジョージ・W・ブッシュ政権でも、宗教保守層の政治的影響力は大きな注目を集めた。トランプ大統領の当選劇にも、レーガン政権が宗教保守から支持を集めたことと似た部分があるという。

 しかし、レーガン政権との違いは何か。鍵となるのはトランプ大統領が打ち立てた物語の中身だ。大宮教授はこうした物語を「神話」と呼ぶ。  

 一度目の大統領選では「アメリカがリベラル化を辞めれば再び偉大な国に成れる」という神話を、二度目の当選を果たした大統領選では「アメリカの立ち返るべき原点はキリスト教国アメリカである。憲法修正一条で政教分離などを掲げた時に我々は道を誤った」という神話を打ち立て、キリスト教の層をつかみ取ることに成功した、というのが大宮教授の分析である。

 つまり大宮教授の整理によれば、宗教保守が政治的な影響力を持つこと自体には長い前例があるが、政教分離という建国の原則そのものを「誤り」と位置づけ直すという物語の踏み込み方は、従来の宗教保守の主張とは一線を画す独自のものだという。こうした点から、大宮教授はこの動きを「キリスト教ナショナリズムが先に存在したのではなく、トランプさんがキリスト教国アメリカの復権を訴えることで、キリスト教的価値観を持つ人々をMAGAに取り込んだ」というように、大宮教授はキリスト教とトランプ政権の関係を捉えた。

 また、トランプ大統領がこうした戦略を成功させ得た背景には「メガチャーチ」があるようだ。

 メガチャーチとは、数千人規模の信徒を集め、現代的な音楽や説教などを取り入れながら、礼拝だけでなくエンターテイメント性も取り入れた巨大教会であり、特に従来の教会に敷居の高さを感じる人でも足を運びやすい点が特徴だ。

 しかし、大宮教授によると近年のメガチャーチの特徴は単に規模が大きいだけでなく、地域や集まる人々に応じて、彼らが求めるメッセージを発信する「マーケティング」を積極的に行っているという。

 例えば、比較的裕福な人々が多い地域では「あなたたちが成功しているのは神に祝福されているからだ」と説き、薬物問題を抱える地域では、そこから抜け出すためのメッセージを発信する。

 こうしてメガチャーチは、人々を集める「マーケティング」と、集めた人々をつなぎ止める「マネジメント」の双方を備えることで、単に礼拝に参加するだけでなく、様々な活動を通じて所属意識を形成し、巨大なコミュニティとなっているのだ。

 こうして福音派に取り込まれた人々の中には、リーマンショック以降、経済の復興から置いていかれた労働者や農民なども含まれ、経済的に取り残された層も多く集まるという。

 大宮教授は福音派の宗教的教義だけから見れば、トランプ大統領を積極的に支持する必然性はないとみる。しかし、経済的に取り残された層には保護関税政策などからトランプ大統領を熱烈に支持する人も多い。そのため教会側も彼らを強く批判できず、なし崩し的にトランプ支持へと進んでいった背景がある。

 大宮教授はアメリカ研究を「日本における政治の方向性を映す鏡」と表現する。「日本は無宗教だから関係ない」と一歩引いて眺めるのではなく、メガチャーチやMAGAのような現象に、自分たち自身が知らず知らずのうちに取り込まれていないか、省みてほしいと訴える。

 そのうえで大宮教授が指摘するのは、キリスト教が説く「愛と正義」について、原点である聖書に立ち返りながら問い続けることの重要性である。この問いを止めてしまえば、その「愛と正義」さえも「飴細工のように、トランプにとっての愛と正義に変わってしまう」と教授は強い危機感を滲ませる。

 その為に関学生が大学で行うべきことは何か。インタビューの結びとして、マルクスの『哲学者たちは世界をあれこれ解釈するけれども、本当に大切なことは世界を変えようとすることである』という言葉が引かれた。

 「関西学院と他大学の違いはそこにある」ただ世界を読み解く傍観者になるのではなく、「世界を変える愛と正義」を打ち立てて学んでほしいとメッセージを送った。

(小林颯翔)

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