関西学院交響楽団は8月11日、兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール(兵庫県西宮市)で第145回定期演奏会を開催した。テーマは「新世界への旅路〜ドヴォルザークと祖国の調べ」。指揮者の鈴木優人さん(44)を迎えてドヴォルザーク「チェロ協奏曲ロ短調作品104」や「交響曲第9番ホ短調作品95「新世界より」」などを披露した。
「チェロ協奏曲」では、チェロ独奏にチェリストの山本裕康さんを迎え、力強い旋律とオーケストラの響きが会場を満たした。プログラムの最後を飾った「新世界より」では、暖かく切ないメロディーから情熱的な旋律に移り変わり、演奏後は割れんばかりの拍手に包まれた。
本番直前、部長の児見山舞香さん(経済学部4年)は今回の演奏会への取り組みや意気込みについて語った。児見山さんにとって4年間で最も熱い思いで迎える演奏会。クラウドファンディングなど今までにない試みを後輩らに見せることで、楽団の可能性をより広げていきたい、日常的に親しみのないクラシックを、学生が中心になるコンサートをきっかけに気軽な感覚で来てもらいたい、と思いを述べた。
元関学交響楽団で指揮者として楽団のトレーナーを担当した浦優介さん(36)は現演奏会に向けた練習について、「音程やピッチを超えて楽譜から離れた部分、作曲者の意図や表現したいことは何かを読み取り、その核を持つことで音楽性を高めてほしい」と、あらゆる角度から練度を向上させることに期待を寄せる。また、浦さんは学生オーケストラの良さは「感情を乗せられること」と話す。今のメンバーで演奏ができるのは今しかない、という環境の中で学生にしか出せない音楽を奏でる、その活動への「熱」が関学大交響楽団の一番の長所でありそれを大切にし、引き継いで欲しいと楽団員の先達としての立場から願いを話した。
指揮を務めた鈴木さんは今回の共演について、「学生オーケストラは時間をかけて練習するので日程的に難しいこともあるが、今年は実現できて本当に良かった」と語る。今回のプログラムの選曲には、鈴木さんも携わった。演奏曲の魅力にも言及し「どちらも本当に素敵な曲。本番で新たな音楽を作り上げられるのが楽しみ」と笑顔で語った。
最後に鈴木さんは「音楽は予習しなくてもその場にいるだけで心に響く。日々の悩みや喜びとともに音楽を受け止めてほしい」とメッセージを送った。
公演後、コンサートマスターの小林文栄さん(教育学部4年)は演奏会を、「学生の持ち得る技術の限界を超え、情熱こそが音楽を動かす力であるという信念を証明する場であったと思う」と話す。「プロには技術で及ばなくても、情熱で人の人生を変えることはできる」。楽団内で掲げてきたこの想いは、空虚な言葉ではなかった。小林さんは、第145回定期演奏会を到達点ではなく出発点とし、人の心を揺さぶり、人生を変えるほどの演奏を追い求め続ける。
(山本一貴 梅田芽衣)

