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失われつつある選手ファースト

7月26日から8月11日までの17日間、フランスのパリを中心に第33回オリンピック競技大会が開催された。約1万人ものアスリートが32競技329種目に出場し、世界中が熱気に包まれた。

今大会は史上最もSDGsへの取り組みを意識した大会でもあった。例えば、競技に使用する設備全体の95㌫を既存施設と仮設で賄った。食事面では使用する植物性食品を2倍にすることで二酸化炭素の排出量を半分にした。ジェンダーの観点からも、女性の審判が男性選手の試合を裁く場面が多く見られた。

一方で、多くの課題を残した大会にもなった。トライアスロンではセーヌ川に道頓堀川の約4倍の濃度となる大腸菌が発生し、泳いだ複数の選手が体調不良を訴えた。選手村の食堂では野菜だらけのメニューが提供され、バランスの良い食事が大切な選手団から不満が続出した。ジェンダーの観点では女子ボクシングに一部男性の染色体を持つ女性選手の出場を認め、他の選手を圧倒するなど多くの問題が発生している。

このように、多様性やSDGsを強調したがために「選手ファースト」という最も重要なものが失われつつある。

「元も子もない」とはまさしくこのことである。私たちも何かを許容していくなかで最も大切なものが失われるリスクを考えていく必要がある。

オリンピックはスポーツを通した人間育成と世界平和を目的としたスポーツの祭典である。4年に一度の大舞台、選手たちは長い時間をかけて準備をしてきた。彼らが最大のパフォーマンスを発揮し輝ける、そんなオリンピックであって欲しいと強く願うばかりだ。(久保田創士)

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