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(日進月歩)増える公園 消える遊具 脅かされる位置づけ「すべての地域住民のための場所」

 鉄棒、シーソー、ジャングルジム、砂場。公園といえばこれらの遊具を思い浮かべる人が多いのではないか。昨今、徒歩で行ける身近な公園から踏み板式ぶらんこ、すべり台など一部の遊具が消えつつある。

 全国の公園数は増加傾向にあり、2020年時点で公園数は約11万カ所に達した。公園の役割は、緑豊かな都市の形成、災害時の避難所、住民が休息したり、遊んだりできる場であることだ。 

 しかし、すべての地域住民のための公園という位置づけが脅かされている。特に、子供の遊び場という機能が失われつつある。

 公園数の増加に対して、遊具の総数は増減を繰り返している。公園数と遊具数の推移が一致していない。その要因の一つは老朽化による修理や撤去だ。19年に国土交通省が1366の地方公共団体を対象とした遊具の設置状況の調査を実施した。設置後20年以上経過した遊具が全体の約半分を占めていたという。

 修理や交換が進む一方で、老朽化して利用できない遊具が多い状況は依然として続く。老朽化の波を止めることは難しく、公園から子供の遊び場が無くなる日が来るのではないかと危惧される。

 老朽化や怪我を引き起こす危険性から撤去される遊具がある一方で、懸垂運動やストレッチをする健康器具の設置数は常に増加。高齢化社会に対応した公園づくりを意識しており、様々な年齢層の人が気軽に訪れることができる。

 しかし、健康器具の使用対象は大人であり、子供の利用には安全面の配慮が必要だという。子供が安心して利用できる遊具が減少し、大人のための設備が充実していく。公園はすべての住民にとって憩いの場といえるのだろうか。

 子供から大人まで、くつろぐ空間の形成が公園の役割の一つだ。住民たちの安全や健康のために重要なことは遊具の老朽化対策に加えて、身近な公園に足を運ぶという習慣を定着させることだ。誰もが「行きたい」と思える環境こそ、公園に求められる要素だろう。

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