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災害に強いまちづくりシンポジウム「神戸から考えるこれからの災害の備えと復興」

 関西学院大学災害復興制度研究所はANCHOR KOBE(神戸市中央区)にて3月20日、災害に強いまちづくりシンポジウム「神戸から考えるこれからの災害の備えと復興」を開催した。  

 第1部では岡田憲夫氏(同研究所顧問・京都大学名誉教授)、(ナ)貞一(ナ ジョンイル)氏(同研究所主任研究員・准教授)、加古裕二郎氏(神戸市危機管理局副局長)が発表を行った。また、関西学院大学生がボランティア活動を報告した。司会は山泰幸氏(同研究所長・人間福祉学部長)が務めた。第2部では山氏、岡田氏、羅氏、加古氏によるパネルディスカッションが行われた。

 第1部の岡田氏の発表のテーマは「激甚災害からの地域復興―阪神・淡路大震災から能登半島地震まで」。コミュニティに着目し、阪神・淡路大震災から能登半島地震にかけてどのような変化が起こったのか、何を学んだのかを講演した。

 阪神・淡路大震災で学んだはずの教訓がその後の災害に活かされていないと同時に、時代性、地域性が異なるため教訓はそのまま活かせるわけではないという。そのため、「コミュニティの類似性と違いをどうおさえるかが非常に重要だ」と力を込めた。

 また、ある特定の災害だけでなく、感染症のような地域に被害をもたらすものを含めた広い意味での災害を捉え、小さなコミュニティから学ぶことが重要だと説いた。さらに、災害に限らず、地域が抱える課題を解決する力を維持するためには、「出会い続ける場のデザイン」が欠かせないとした。

 羅氏は「「人間の復興」を目指して―市民・地域とともに歩む災害復興制度研究所」をテーマに、災害復興制度研究所の概要やこれまでの活動と成果、今後の展望と方向性を紹介した。

 「これからも地域の人々と一緒に活動しながら災害復興に関することを研究し、その結果を社会に発信したい」と現場の声を反映した研究活動の展開に意欲を示した。そして、「実感できる人間復興とは顔の見える人間復興なのではないか」と問いかけた。

 加古氏は「災害に強いまちづくり―過去の教訓とこれからの取り組み―」をテーマに、神戸市での災害に対する様々な取り組みについて解説した。

 そして、災害に備えるために、家庭内での備蓄、在宅避難の再考、神戸市リアルタイム防災情報や神戸市災害掲示板の確認を呼びかけた。最後に、「様々な災害に対応できる強靭な町を目指して防災に取り組んでいきたい」と決意を述べた。

 関西学院大学生は、ボランティア活動支援センターのヒューマンサービス・支援室が主催する「能登半島地震現地ボランティア」の第8回・第9回への参加を通して学んだことを報告した。

 鈴木つぐみさん(当時総合政策学部1年)は大学生がボランティアに行く意義について、「自分が行ってよかったと思っているのが何よりの証拠」と述べ、「ボランティアは自分を知ることができる良い機会」と振り返った。

 日々野敦紀(あつのり)さん(当時総合政策学部1年)は「災害に強いまちは人とのつながりが強いまち」だと学んだという。そして、忘れられてしまうことの怖さ、第三者からの心無い言葉、外部からの関わりの限界が課題であり、「継続して現地へ行くことが重要だ」と訴えた。

 第2部のパネルディスカッションでは、第1部の発表を踏まえ、山氏が岡田氏、羅氏、加古氏に質問を投げかけた。

 山氏は岡田氏に、コミュニカティブ・スペースとは何か、そしてその重要性について質問した。コミュニカティブ・スペースとは、人と人が互いに出会い直し、共に作り合う関係づくりの空間である。

 住民同士で普段から様々なことを話し合っていた地域は、自分たちのルールで行動するという習慣ができていたため、災害に見事に対応できていたと指摘した。「コミュニケーションし続けていく場が、その場に参加する人々を育てていく」と語った。

 次に羅氏は日韓の災害対応の違いについて問われた。日本と韓国の災害復興を比較する研究をしている羅氏は、災害の規模が日本では大きく韓国では小さいという違いがあると指摘した。そのため「どちらが良いか悪いかではない」としたうえで、韓国は国主導で対応する一方、日本は平時から自治体が体制を整えて対応していると説明した。

 さらに、長期的・持続的な対応という観点から、「韓国側から日本の体制・対応に学ぶべきところが多くある」と言及した。

 加古氏は、第1部での発表の補足として、「想定外を想定内に」という言葉について説明した。この言葉は「想定していること以上のことが起こるかもしれない、ということを普段から考えていくこと」だと強調した。そのため、普段から小さな取り組みを通じて災害に備えていくことが重要だと語った。

 最後に山氏は、「超高齢社会において地域が弱っているとき、何が必要なのか」と3人に問いかけた。

 岡田氏は「誰が何をするのか、誰と誰が何をするのかという主語をはっきりさせること」、加古氏は、「行政・市民・外部が協働で取り組んでいくこと」、羅氏は「ボランティアだけに頼るのではなく、住民の活動のための協力的なガバナンスをつくること」が重要だと語った。

(山須田優)

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