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金菱ゼミ 震災の記録プロジェクト出版報告会

社会学部の金菱ゼミは12月2日、ゼミ生が被災者に聞き取りをしてまとめた書籍『大災害と相対的トラウマ―出来事がいかにその人に生きられてきたのか』(ナカニシヤ出版、2025年)の出版報告会を行った。

本書は、ゼミ生が1年以上かけて行ったフィールドワークの成果をまとめたものだ。「震災とトラウマについて多くの人に知ってほしい」という思いを背景に、大災害によって生じるトラウマを個人の主体的な生き方の物語として捉え直す、「相対的トラウマ」という新しい視点を提示している。

報告会では、学生たちが実際に聞いた当事者の生の声や、エピソードから得られた知見が紹介された。

能登半島地震の被災者を対象に調査をした下山直誠さん(社会学部4年)は、「相対的トラウマは、震災による生活の小さな変化などが積み重なったもので、絶対的トラウマよりも引き起こされやすい。そのため、トラウマの核は、相対的トラウマに着目することで見えてくるのではないか」と述べた。

金菱清教授は、学生に「ブラック・スワンを探すように」と助言をしてきたという。「たった一羽でも黒い白鳥を発見できれば、白鳥の概念そのものが変わることになる。トラウマはこういうものだ、と思い込んでいるものとは異なる側面が、フィールドワークを通して見えてくる」と語る。

さらに、「トラウマに限らず、これからの人生を歩む上で違う視点で物事を見ることは重要だ」と既成概念を問い直す姿勢の大切さを語った。

社会が点を語るとき、人は線を生きている。このずれにこそ、声にならない痛みが潜んでいる。本書は、震災から生きる人だけでなく、震災と生きる人の思いにどれだけ耳を澄ませることができるのかを問いかける、学生たちの実践である。

(山須田優)

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