井戸敏三元兵庫県知事
1月12日、災害復興制度研究所は「阪神・淡路大震災30年、問い直そうー私たちの被災者責任・これからの被災地責任」のシンポジウムを関西学院会館レセプションホールにて開催した。同研究所主任研究員の羅貞一氏が司会を務めた。
中道基夫院長、森康俊学長、来賓の公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構特別顧問の井戸敏三元兵庫県知事が30年を迎えた阪神・淡路大震災、そして能登半島地震を踏まえた開会の挨拶をした。
水墨画家で作家の玄順恵氏が「『被災の思想、難死の思想』から『われ=われ』のサラダ社会へ」と題して特別講演を行った。阪神・淡路大震災を題材にした作品の紹介をはじめ、作家で夫の小田実氏の体験や言葉を引用した震災と復興を語った。「阪神・淡路大震災を吟味し続けること、問い続けることが人間の復興、そして「公」と「私」の中でどう生きるかという答えを少しでも引き出せるのではないかと思います」と講演を締めくくった。
続く基調報告では、同研究所所長の山泰幸氏が災害復興制度研究所の目的と活動を語った。日本初の「復興」を目的として始まった同研究所は災害復興法制の研究から東日本大震災、熊本地震、首都直下地震などの研究、書籍の発行などを行う。
基調講演は神戸大学名誉教授で兵庫県立大学名誉教授の室﨑益輝氏が行った。
復興におけるプロセスのデザインの重要性について話し、特に「災害時の記録を残すこと」「構想計画策定で住民と専門家を巻き込む意思決定を行うこと」「繰り返しの検証をはかること」の3つを強調した。能登には復興として自由に使える復興基金と頻繁な支援会議の実施で被災者目線の復興を行う重要性を訴えた。
パネルディスカッションでは最初に関西学院大学災害復興制度研究所顧問の山中茂樹氏が「被災者責任とは被災者の自負心と共感力である」と語り、他のパネリストに被災者責任とは何かを問いかけた。
関西国際大学名誉教授の齋藤富雄元兵庫県副知事は「被災地行政の責任」を挙げ、阪神・淡路大震災が防災・減災の「画期」となったキーワードとして「繋ぐ」「共生」「生活復興」「事前防災」「創造的復興」を示した。
大牟田智佐子毎日放送報道情報局報道業務部次長はメディアの責任を挙げ、阪神・淡路大震災当時、メディアは「集中・反復・大量報道」を一部の避難所で行い物資の偏りなどを引き起こしたことを例に出した。「伝える責任」、「とどける責任」、「のこす責任」の3つを重点的に語った。
認定NPO法人コミュニティ・サポートセンター神戸理事長の中村順子氏は阪神・淡路大震災からの教訓は「人を元気にして自分も元気になる」、「得意を社会的な課題と結びつけ地域を元気にする」と伝えた。また、行政、企業、非営利というセクター間の協力の重要性を投げかけた。
閉会の挨拶で、関西学院大学災害復興制度研究所顧問の岡田憲夫京都大学名誉教授は「この素晴らしい機会を受け止め、ほかの人に伝えていく努力を続けたい」と語り2日間のフォーラムは終了した。
本紙の取材に来賓の井戸敏三元兵庫県知事は「阪神・淡路大震災30年の復興過程というのは、その時々の人たちが地域を支えてきた。だから一つ一つの課題に対して基本姿勢を続けていくことが重要だ」と関学生に向けて訴えた。
(田爪翔)