「ファッション」、それはラテン語のファクティオに由来する英語であり、その定義は「特定の時期に一般に受入れられ,普及した社会現象や生活様式などのすべてを含む,流行,風潮,様式などの意味であるが,一般的には主として服飾の流行」である。ファッションの哲学という言葉があるように、服を着る行為は人間が身体とどのように付き合い、世界を把握し、自身を形成しているか、いわば個人と世界のつながり方ではないだろうか。
今回は3人の関西学院大学の学生にインタビューを行い、それぞれのファッションへの思いを聞いた。
藤原里音(社会学部3年)
藤原里音(社会学部3年)=本人提供
ファッションに対する自己表現に対する思いについて「ファッションにおけるビューティースタンダードは、本来は普遍的なテーマであるべきものを、そうではないかのように惑わせる概念だと思っています。本来はもっとシンプルだと私から発信して行きたくて」と藤原さんは語る。
コーデのポイントは、ニューヨークの古着屋で購入した、映画pulp fictionのヒロインであるミアが大きくプリントされたTシャツだ。インパクトのあるTシャツに、足元はマーチン、ショルダーバックはNew York from Nowhereのブランドをチョイスしている。そんな彼女のファッションは、日頃歌手として活動する本人の感情を細部にまでいき届けている。
「仕事柄、他者からどう見られているかという意識を持っています」と藤原さんは語る。自身のトレードマークをヒョウ柄とする彼女は、スポーティなファッションの中にも、スカートやレースタイツといったアイテムを掛け算し、Y2Kやバレエコアを表現。どこか可愛らしさを残している。
彼女にとってファッションとは「言葉を発さなくても表現できる唯一の個性で、心の中を鮮やかにしてくれるきっかけです」そう語る彼女の他者理解の深さは、自分自身に核があってこそだと思わされる。
川上似姫(社会学部3年)
川上似姫(社会学部3年)=2024年11月20日、関西学院大学西宮上ケ原キャンパス、山本紗佑里撮影
川上さんのファッションはジャンルを問わない。コーデに使用したものには古着が多く、SLYのレザージャケットに、鮮やかなオレンジのラルフローレンのトップスが映える。アクセサリーはアメリカの雑貨屋で購入したという。
自分という人間を型にはめないためにも服を通して様々な感情を表現している。「その日の気分を映し出した化粧をしたり、洋服を身につけたりすることで自分に対して自信が持てる」というその言葉はコーデへのこだわりからも分かる。
服装にはカラーアイテムを最低でも3色取り入れるという。色を見ることで気持ちが華やぐと語る彼女の考えが伝わってくる。川上さんは「昔は似合っていると言われるものやウケを意識することもあったが、ファッションを通しての挑戦が今は楽しい」と語る。
そんな彼女が好きな音楽はオルタナティブ音楽だ。「型にはまらない」という意味があり、商業的な利益を重視する流れに逆らう精神を持った音楽である。自分らしくいられることは悩むほどに楽しいと語る彼女の表情は生き生きと眩しい。
高橋悠(商学部1年 関西学院大学音楽研究部部長)
高橋悠(商学部1年、関西学院大学音楽研究部部長)=本人提供
音楽研究部の部長である高橋さんは、ファッションにおける“気持ちいい”は、「自分が決めたその日のコーデに関するテーマを思い浮かべることができるか」であると話す。
彼のコーデのポイントは、ハイブランドの中にもデザイナーズブランドを混ぜているところだ。髪型のコーンロウを主軸に、Givenchyのシャツを一番上のボタンまで閉めることできっちりとした印象をもたせつつも、シャツの襟にはシルバースタッズが付いている可愛さと抜け感、グレーのスニーカーを合わせて柔らかい印象を出す。
抜け感に対してのアドバイスとして「ストリートの要素を持ったアイテムを所々に散りばめる」ことをお勧めしてくれた。「布地の素材を選ぶ、定番の靴を履く、髪型のセットなど、人それぞれ様々な方法があると思います」と高橋さんは語る。
聞く音楽も着る服装も、ジャンルを問わない彼だが、周りの友人の姿から音楽と服装の関係について語ってくれた。「仲のいい友人や自分のことを考えると、音楽と服装に直接的なつながりはなくとも、その人それぞれの人格を通してつながるものがあると感じます。楽観主義・平和主義など、その人一人ひとりの性格の特徴が音楽にも服装にも影響を及ぼすと考えます」言葉の節々からその人としての核が感じられる彼の今後の部長としての活動に注目したい。
ONKEN 関西学院大学公認 音楽研究部 Instagram: kg_onken.dj
インタビューを通し彼、彼女たちそれぞれのバックグラウンドや思いを投影したファッションを垣間見ることができた。自分の「好き」に自信があるからこそ、他者のこだわりを真っ直ぐに見つめ、その魅力に気付くことができる。「好き」「気持ちがいい」「心地がいい」これらの感情を試行錯誤し表現することが自分と向き合うことではないかと感じる。 (山本紗佑里)